これは老母の写真で。
マアお 這入 ( はいん )なさいナ、それとも 老婆 ( ばばア )ばかりじゃアお 厭 ( いや )かネ、オホホホホホ」 「イヤ結構……結構も 可笑 ( おか )しい、アハハハハハ。
まずネ、お下着が格子縞の 黄八丈 ( きはちじょう )で、お上着はパッとした 宜引 [#「引」は小書き右寄せ]縞 ( いいしま )の糸織で、お 髪 ( ぐし )は 何時 ( いつ )ものイボジリ捲きでしたがネ、お 掻頭 ( かんざし )は 此間 ( こないだ ) 出雲屋 ( いずもや )からお取んなすったこんな」 と 故意々々 ( わざわざ )手で形を 拵 ( こし )らえて見せ、 「 薔薇 ( ばら )の 花掻頭 ( はなかんざし )でネ、それはそれはお美しゅう御座いましたヨ……私もあんな帯留が一ツ欲しいけれども……」 ト 些 ( すこ )し 塞 ( ふさ )いで、 「お嬢さまはお化粧なんぞはしないと 仰 ( おっ )しゃるけれども、今日はなんでも内々で薄化粧なすッたに違いありませんヨ。